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「なん…だと…?」では済まされない何かを求めて――
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第3回 ダメジャー第1試合 前編
遂にこのときが来た。 まず我々が注目したのは、説明書だった。 他の研究者の手によって既に判明している恐ろしい誤植をこの目で確かめるためだ。 小さな説明書に7人が群がり、細かい活字を肉眼でひたすら辿る光景は、なんとも言えなかっただろう。 そして、我々は見つけたのだ。 どうやら「じょうじ」なる人物を操作するらしい。 「十字」と書いて「じょうじ」と読むのはオサレなのだろうか。 「けっめたコースと相手の投球が合致した時にスイングするようにしましょう」と書かれている。 もはや何も合致していない。 これが、ゲームを買った時の「明日こそやるぞ」とワクワクしながら説明書を熟読してしまう心を破壊する力なのだ。 これは前座であることを誰もが疑った。 そして我々は、いよいよ悪魔を起動した。 現れるタイトル。普通なはずなのに、なぜか禍々しく感じる。 しばらくタイトルに見入る。 おかしい。何かがおかしい。 そうだ、オープニングデモがない。 さすがである。ゲームを買った時、オープニングデモやムービーを見て期待感をさらに上昇させる心をまたも破壊する。我々も心が折れかけた。 だが、まだ真価は発揮されていない。我々はこの悪魔の核心に迫るまで研究を続けなければならない。 我々はいよいよ「ストーリーモード」に入ることにした。 物語は、主人公、ピッチャーの茂野吾郎がアメリカでトライアウトを受けるところから始まる。 そうして紙芝居が始まった。 「ストーリー重視」とは言え、会話の数も多く、テンポが悪い。 読み込みが別なのか、ボイスがテキストよりもかなり遅れて開始されるため、ゆっくりテキストを読んでいてもボイスに追い越されることはない。 そしてあくまで紙芝居のため、試合以外の演出力は皆無。 長い前置きに飽き飽きしていた頃に、ストーリーは吾郎がメジャーの4番と対決する流れに。 そして長いローディングが始まった。いよいよ、我々が操作できる場面がやってきた。一体この先我々を何が待ち受けているというのか。それにしてもローディングが長い。 ローディングが明ける。そして―― な ん だ こ れ は
誰もが目を疑った。 我々は、起動してストーリーモードを開始した、ただそれだけである。 予想以上の衝撃に研究員全員の腹筋が尽く破壊された。 研究員は呼吸困難に陥り、まともに立っていられず、地に這いつくばった。 そして全員口をそろえて断末魔の叫びを挙げる。 「 こ っ ち む け よ 」 ようやく空気が落ち着いてきた。 かろうじて我々は一命を取り留めていた。 恐れ戦きながらも我々は自信の好奇心に従うままに続きを始める。 これが振りかぶった吾郎の姿である。 簡単に三球三振を取った吾郎。そこに4番(笑)は言った。 「お前のことをみくびっていたようだ。もう1球だけ勝負をしないか?今度は本気で相手してやるよ」 本気、ということは前を向いてくれるのだろうか。我々は息を呑んだ。 そうして「本気の1球対決」が始まる。 頼むから本気を出してほしい。 「これがこいつのスタンスなんだ」と必死で言い聞かせながら我々はジャイロボールを投げさせた。 すると・・・ カンっ! 究極の業が炸裂した。打ち方が全く分からない。「宇宙の法則が乱れる!」としか言えない。 ボールは転がり、吾郎を突き抜け、セカンドベースへ。 セカンドがボールへ向かうかと思いきや、セカンドベースでピタリと止まる。 ボールはセンター前へ。しかしセンターは微動だにせず冷たくたたずんでいる。 どういうことなのだろうか。 しかし、打球が止まりかける頃に、画面下から神が現れた。 キャッチャーはボールを取り、すぐに3塁へ。 しかしセーフとなった。 我々の理解力はとうにキャパシティを越していた。 それでも働かない頭をフルに稼働しながら状況を理解しようとする。 しかしゲームは進んでいく。 そして、次のバッターが現れ・・・て・・・ 「1球だけ」 その言葉が我々の頭をよぎる。 画面には次のバッターが悠々と後ろを向いて構えている。審判はどっしりと腰を落とし、こちらに尻を向けている。 わけがわからない。 もう完全に思考能力を失った我々は、ただボタンを押すだけの人形と化した。 打つ。 センター前までキャッチャーが走る。 ランナーは余裕で3塁で刺される。 その繰り返しで、アウトを3つ取った。 すると、こっちを向かない主審から驚くべき言葉が口にされた。 「チェンジ!」 今度は我々がバッターとなっていた。 しかも、打席に立つのは吾郎でもなく、よく知らない人である。 バッターは当然の表情で、画面の向こうの我々を見ていた。 後の展開は同じである。 打つ、センター前にキャッチャー、走塁はオートなのでランナーが3塁で刺されたり刺されなかったり。 アウトの確率も高いが、驚くほど簡単に点が取れていく。 なんだ、このシステムは。 いや、今一体何をしているのだろうか。 このチームメイトとか誰なのか。何をやっているのか。 結局こちらも3アウトとなり、ようやく紙芝居に戻った。 ここで我々は吾郎に激しく同意した。 勝負には負けたものの、一次試験に合格した吾郎はこう言った。 「あれがメジャーの実力ってことか・・・?」 この状況を受け入れられる吾郎の精神力が信じられなかった。 もう我々は吾郎が本来気合いを入れた時などに使用されるこの表情を続けることしかできずにいた。 しかし我々はここで挫けるわけにはいかない。 薄れる意識の中、さらに続けていく。 続いて、ストーリーはトライアウトチームがメジャー相手に10点差を覆す、というテストに入った。 これは原作通りの設定ではあるが、実際のゲームで与えられた指示は、 三回まで無失点に抑える というものだった。 だいぶグラフィックにも慣れてきていた。 むしろそれは我々の精神の崩壊を意味している可能性も十分だったが、それどころではなかった。 三回まで無失点とは言え、ほとんどが3塁でアウトになる。 我々は思考が多少の回復を見せてもなお、ボタンを押すだけの人形に変わりはなかった。 攻撃についても同様だった。 どのタイミングでも、かすりさえすればセンター前に届くことが判明したため、我々はボタンを押し、確実に当たるバントをし続けることにした。 しかし、ここでは多少のAIが働いてか、ランナーがしばしば止まってくれるようになった。 さらに、ランナーは勝手に盗塁を開始し、そこでバントが当たるため、結局はヒットエンドランになる。 それを繰り返していると、止まらなく点が入っていく。 極めつけに、 センター前でボールを拾ったキャッチャーは、セカンドで刺せそうなランナーを無視し、3塁からホームに向かうランナーを刺すために、自力でホームに走っていく。 いくらこのキャッチャーが俊敏とはいえ、既に3塁を蹴っているランナーに、センター前から間に合うはずがない。 このキャッチャーは完全にアウトを取る気がないのだ。 精神の疲弊から、意識がもうろうとしていた我々だったが、気がつくと3回裏にして「21-10」とコールドゲームを作り上げていた。 もしかして、精神の廃れた我々でもゲームを進めることができるように、このようなシステムにしたのだろうか。 そのようなことが頭をよぎり、再び自ら否定した。 いや、違う、こんなのは、ゲームじゃない しかし、条件を満たし、コールドにも関わらず、紙芝居に戻ると、 「トライアウトチームは惜しくも届かなかった」 となっていた。 もしや、あの点差をあの後逆転したというのだろうか。 我々を極度の虚無感が襲う。 失点しないことだけが目的だとしたら、攻撃回を操作させる意味があるのだろうか。 我々は、もう限界だった。 そう、 飽きてしまったのだ 好奇心のみでここまで献身的に動いてきた我々にとって、それが湧きあがらないのであれば、続けられるはずがない。 「リセットして違うモードやろっか」 ある研究員の言葉を皮切りに我々はストーリーモードを一旦やめることにした。 しかし、忘れてはならない。 我々はまだ、悪魔の恐ろしさのほんの一部しか目の当たりにしていないのである。 というわけで、前編です。 後編はそのうち更新しますが、主に別モードの話や、システム全体の話をしようと思います。 多分普通に書きますw それではまた ノシ PR コメントを投稿する
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